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「暮らしを見直せば、感性を磨くことができる」デュニヤマヒル

「暮らしを見直せば、感性を磨くことができる」デュニヤマヒル

ここ、「デュニヤマヒル」の住人、山口暁(あきら)さん(64)は、舞台の照明デザイナー。遊びや仕事で他府県に滞在することも多いが、和歌山に来ればここで過ごす。
 福岡県出身。23歳で上京してから舞台照明の道へ。28歳で仲間と会社を設立し、25年間にわたり数々の芸能人の舞台を手がけた。
 山口さんによると、照明デザイナーの仕事は、舞台と観客の間に橋をかけること。ライトの色彩や配置はリアリズムを再現するよりも、ファンタジーな雰囲気に仕上げて、「ドラマ性を生みだす」という。
 

仕事が充実していた都会での日々は、最先端の情報が刺激的でもあり、とても楽しいものだったが、転機が訪れたのは50歳を過ぎた頃。自分のデザインがつまらないと感じられるようになり、「前のようなひらめきは、どこへいったのだろう…」と思い悩むようになった。人の共感を得ることがテーマの職業のゆえか、自分自身もテレビのバッドニュースに共感し、ネガティブな思考回路になっていることに気がついた。
 そこで当時、和歌山で、自主性を尊ぶ「きのくに子どもの村学園」に通っていた子どもと妻の元へ、移り住むことにした。紀の川市の畑で生のエンドウ豆を食べた時、「美味しいを通り越して体がすっきりした」というほど感動。「暮らしを見直せば、感性を磨くことができる」と確信した。「明日の不安を抱えて振り回されることから卒業したい」と、テレビを捨てた。
 

草がぼうぼうに茂る丘を500万円で買い、2012年から5年ほどかけ、山を開墾しながら作った小さな家は、8種類。藁(わら)の家や球体の家、タイニーハウスなど、インスピレーションが次々と湧いてきた。そして「世界中の人がつながり幸せになろう」という意味で、西アフリカ音楽曲のタイトルでもある「デュニヤマヒル」と名付けた。
 風呂は、薪の直火炊きだから、何度も湯加減を見に行かなければならない。トイレは用を足したら、おが屑や好気性微生物活性剤などを入れてレバーを回して混ぜ、土に戻すコンポスト方式。風呂やトイレにどれほど手間ひまがかかっても、遊ぶ時間はまだまだたっぷり残っている。それでも、山口さんは、早朝から「何か作りたい!」とわくわくする気持ちを抑えきれず、飛び起きている。
 
 
小さな家が集合したファンタジーな世界、「デュニヤマヒル」は、いつでも見学できる。(外観のみ)

〒640-1221
和歌山県 海草郡 紀美野町 三尾川482